大江戸写真散歩
本郷三丁目から 水道橋まで
まえがき 先々回は、徳川家康の生母「於大の方」、二代将軍秀忠の長女「千姫」、三代将軍家光の正室「孝子」のお墓のある伝通院を訪ねた。 今回は、徳川ゆかりの女性の一人としてその名も高き、三代将軍家光の乳母「春日局」の墓所を訪ねる。 地下鉄大江戸線または丸の内線の本郷三丁目駅を、本郷通りと春日通りの交差点に出る。交差点の西南角が煉瓦色の「かねやすビル」である。 |
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春日通りの北側の歩道を東に約150m行くと、本富士神社と富士浅間大神の碑がある。ここは、落語編『くしゃみ講釈』で訪れた駒込の富士神社があったところで、近くには古墳などがある。この辺りの旧町名は「本富士町」であった。 神社の裏手は、平成10年に、年少人口の減少に伴う小中学校適正配置計画により廃校(他校と統合)となった区立第二中学校(旧本郷小学校)の跡地である。現在(平成21年11月)、古墳の発掘調査が行われている様子である。 |
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そこから100mほど進み、本富士署の角を北に入った突き当りが東大の竜岡門である。 門の名前は、その地が竜岡町であったことに由来する。東大の構内に一般車が出入りできる唯一の門である。正面の高い建物が本部棟で、その右側に東大病院等の医学関連施設がある。 道幅を広く取るために門扉は取り除かれており、門柱だけが残されている。 |
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春日通りに出てなお100mほど行くと、左手に麟祥院の参道がある。 麟祥院は寛永元年(1624)春日局の隠棲所として創建されたが、局の死後、菩提寺となる。法名にちなんで天澤山麟祥院と号す。 門を入って左手奥、樹木の茂みの中に春日局の墓がある。墓は卵形の無縫塔で四方に向けて丸い穴が貫通している。これは、死後もあまねく天下を見透して、徳川のご政道を見守るためという。 |
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明治20年(1887)井上円了が東洋大学の前身である哲学館を境内に創立た。哲学館からは月3回の講義録が送られていて、当時すでに、今日でいう通信教育が行われていたという。 井上円了は哲学、宗教の啓発のみならず、迷信の打破を目指しても活動した。中野区の哲学堂は、これらの活動の拠点であった。 |
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麟祥院の前で春日通りを横断して、南に約200m行くと左手に霊雲寺が見える。 霊雲寺は、元禄4年(1691)五代将軍綱吉が徳川家のための祈願寺として創建した。堂塔伽藍は関東大震災で焼失し、その後の仮本堂も戦災で焼失した。現在の本堂は、昭和51年(1976)に再建されたものである。 |
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霊雲寺を出て春日通りから来た道に戻ると、湯島2丁目の交差点にでる。この辺りの窪地を昔は傘谷(かさだに、からかさだに)と呼び、傘づくりの職人が多く住んでいたという。ここから南に向かって続く上り坂を傘谷坂という。写真は北側の坂の途中から傘谷およびその向こう側の傘谷坂を望んだところである。坂がV字形に連なっている。 傘谷坂の途中に日本サッカーミュージアムがある。 坂を上りきると蔵前橋通りと本郷通りが出合う湯島1丁目交差点に出る。 |
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ミュージアム |
本郷通りを北西に約200m進み、本郷2丁目の交差点で細い道を西に入る。100mほどで、左側に本郷給水所公苑にいたる。給水所の上に、洋風と和風の庭園が作られている。 公園の北側に、三念寺がある。 |
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三念寺の前の道を西にクランク状に約150m行くと、右側に昌清寺がある。 昌清寺は目下、改増築中であった。 この寺に関しては、徳川忠長と母お江(ごう)の方(お江与・二代将軍秀忠の正室)および春日局にまつわる物語がある。話が長くなるので説明板を参照してもらいたい。 |
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昌清寺を出て西に進み、桜蔭学園の間の道を100mほど行って、突き当りを左折する。その先すぐの突き当りを右に曲がると、急な下り坂に出る。この坂が忠弥坂である。 丸橋忠弥が由井正雪とともに、慶安4年(1651)江戸幕府の転覆を企てて失敗におわり、捕らえられたのがこの坂の近くだという。また、忠弥の槍の道場がこの坂の上辺りにあったという。 |
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坂を下りきった角に、宝生能楽堂がある。 和の伝統美をふんだんに盛り込んだ桧造りの舞台があり、月並能やいろいろな会が催されている。 |
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能楽堂の北隣に、水道橋稲荷神社と金刀比羅宮東京分社がある。 この辺り一帯は、高松松平家の下屋敷があったところである。その関係で、ここに金刀比羅宮の分社があると思われる。隣接地にある稲荷神社は、境内社であろうか。 ここからJRあるいは地下鉄三田線の水道橋駅に行き、ゴールとする。今回の散歩は、3Km前後と思われる。 |
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あとがき 前々回の伝通院コースと今回の麟祥院コースで、徳川前期における女性の生き様の一端を垣間見てきたような思いがする。次回から数回は気分を変えて落語コースを歩き、粋、洒落、笑いの町角を行き来してみたいと思う。 |